「緩和ケアも治療です」

今日はこの記事に沿ってお話させて頂こうと思います。

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この、背を向けた医師と右側から伸びるたくさんの手
とても印象的な、象徴的なイラストですね。

進行再発がんで化学療法を行っても、殆どの場合がんを完全に
治癒させることは出来ません。いつかは効果が不十分になり、
または副作用のため継続が出来なくなります。この時に、

「残念ながら、もう当院で行える治療はありません」
「好きなことをして余生を過ごして下さい」
「緩和ケアを探しましょう」

と主治医から告げられることになります。
ここで患者さんは見捨てられた気持ちになり、
絶望的になったり、
怪しい免疫療法に大金をつぎ込んだり。
もちろん中には病状を受け入れて余生をより良く生きようと
する人もいるでしょう。

片木さんは、卵巣癌経験者として患者さんの立場からこの文章
を書いておられます。片木さんが言うように、患者さんの心は
いつも不安でいっぱいです。たとえ偽りでも、希望を与えて
くれるものにすがりたい気持ちも、とても良くわかります。

一方で、では医師はどのような状況にあるでしょうか。
また、どのような態度が望ましいのでしょうか。

まず、医師は出来る範囲の治療でベストを尽くして来たのは
ほぼ間違いありませんし、語っていることは嘘ではありません。
曖昧な説明をし、効果がないと思われる治療をだらだら続ける
医師もいます
が、それはそれで望ましい態度でしょうか?

言い方がきつい、という話もよく聞きます。これは医師にも
改善すべき点は間違いなくあるでしょう。しかし、
「もう治療はありません」
を、
「緩和ケアも治療です」
に言い替えたところで、その実対応が同じであれば口先だけで
あることはすぐに患者さんに見破られてしまいます

「緩和ケアも治療です」と言い、他の病院に紹介するだけなら
患者さんからすれば見捨てられていることになり、変わりありません。
つまり、話し方の配慮は必要ですが、それだけで患者さんが
救われるわけではないということです

主治医が抗がん剤にも匹敵する効果を緩和ケアで俺が実現して
みせる、という意気込みでその後も患者さんと向き合い続け、
初めて「緩和ケアも治療です」が本当の意味で患者さんの支え
になるのではないでしょうか。あるいは、緩和ケアの病院を
紹介しても、「緩和ケアの○○先生とはいつも連絡を取り合うし
この病院でしか出来ないことがあったら、またいつでも来て
良いんだよ」くらい言えれば、患者さんの見捨てられた感は
少なく、不安は随分軽減するように思います。

緩和ケアはきちんと行うには時間がかかります。傾聴する、と
いう意味もありますが、適切な薬剤を選択するために、例えば
「痛み」ひとつとっても、どこが痛いのか、いつから痛いのか、
どのような時にどのように痛むのか、によって使う薬が変わります。
全部オピオイドで解決するなら緩和ケア医などいりません。
抗がん剤の効果を判断する外来のタイトな時間の中で、これが出来るか
ということです。終末期の患者さんは入院も多く、長くなりがち
ですが、総合病院やがん専門病院でないと出来ない特別な治療は
ありません。病院の性質やキャパシティーについては治療を受けて
いる患者さんも理解して頂く必要があるのではないかと思います。
在宅医や緩和ケア医に任せた方が患者さんにもプラスのことが
多いのではないでしょうか。

話をまとめます。

主治医側に望むことは、緩和ケア医と連携を強めて頂くこと。
積極的に話す機会をつくることを、多くの緩和ケア医は
歓迎するはずです。連携が強まれば、患者さんの見捨てられた
気持ちはかなり軽減するのではないでしょうか。
また、「病状は厳しいけれど、体調が落ち着いたらまた治療を
一緒に考えましょう」、「必要な時はまたおいで」と言って
頂くだけで見捨てられたわけではないと患者さんは思うこと
が出来ます。

患者さん側も全て医師に任せるのはあまり良くないです。
予め病院の治療の効果と限界を学んでおく方が良いですし、
いつか治療がなくなる、出来なくなることも考えておくことが
望ましいです。Drに直接聞けなければ、診察のあとに看護師さんに
聞いてもらって下さい。そこを遠慮していては良い関係は築けない
と思います。「そんなこと聞いていない」の責任の何割かは
実は聞かなかった御自分にもあると思うのです。

片木さんの記事の、もうひとつ大切な部分、
代替療法については、また日を改めて。

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