1年の終わりに、マリアのレシピを

先日、邪宗門に足を運びました。 

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「ゆんさんって森茉莉が好きそうだね」

と言われたのはいつだったっけか。

いつ、どこで、誰に言われたのか思い出せないが、初めて森茉莉を人からすすめられたとき、私は国語の授業を思い出し、あっ、あの人か、と腑に落ちたことはやけに鮮明に覚えている。

国語でちょうど舞姫を扱っていた時だ。

授業で森鴎外についての文学史もさらりと扱った。そこで、余談として話されたのが森茉莉のことだった。

と、黒板に変わった名がすらすらと書かれる。

今でこそ、キラキラネームの先駆者というイメージを持たれがちだが、学生当時は由来する読みが印象的だったので、その一回きりで、みごとに頭の片隅にこびりついてしまったのだ。

かくいう経緯で、森茉莉のことはその余談で知り、加えて、人から好きそうと言われたことがきっかけでまともに知ることになったのだ。

そして、最近になってようやく彼女の著書を手に取ることになる。

 

私の背中を押したのは、食であった。

 

私をよく知る人はご存知の通り、私は相当の偏食家だ。なんでも食べた森茉莉とは対照的である。好き嫌いが激しく、外食で口にする肉や魚は臭かったり血の味がするだの騒ぎ立て、ギトギト油の強い料理を食べると翌日までお腹を壊す。友人に誘われて食べに行ったケーキは見た目こそ可愛らしかっただが味はただ甘みがある粘土のような、咀嚼するだけで「ウプ」となり、吐き出したくなるものも多々あった。(なので、お喋りの内容なんかよりも、食というか、味覚の趣味が合わない人とは親しくなれない、味覚の方がよっぽど正直なので)

あまりに偏食がすぎるので、私は1、2年前くらいから料理を始めた。

料理をすることにより、私は、少しずつ、自分の好みの味付けのレパートリーを増やしていった。本屋に行くと、料理本が置いてあるフロアで二時間ほどレシピ集を眺めて、どうしたらもっと美味しくなるのか、好みそうな料理はないか、とうろうろとしたり、じっと頭の中で作業工程をシュミレーションしたりして(これがすごく楽しい)過ごすこともある。

ある時私は、その本屋で森茉莉のエッセイをみかけ、手に取った。そういえば森茉莉をすすめられたこともあったし、国語の授業でほんの一瞬話題になったな、と点と点が繋がったのだ。

読み始めると、ページの殆どが食についての話題で埋められているではないか。

しかも、相当面倒くさそうなまでに料理や生活についてあれこれ言っている。エッセイには様々な森茉莉がいた。

冷たい紅茶にはここの氷じゃないと嫌だ!とわざわざ氷だけを求めて外に出る森茉莉、料理の腕は一人前だがその他全ての家事生活は怠惰だった森茉莉、ときに少女のように父、鷗外を思う森茉莉、カーディガンをたくさん買い込んで箪笥にしまっている間にうっかり虫に食わせてしまって夜中に「誰も見まい」と川(!?)に流しに行く鷗外一家のことなど。 

途中、レシピのメモがいくつも書かれていて、先日、それに倣って、『牛肉とキャベツの煮込み』を以下のサイトを参考にして作ってみました。

 

森茉莉の料理: プルート通信

cookpad.com

どちらもブイヨン、コンソメキューブを使っておりましたが、今回は使わないで、出来上がり際の塩コショウのみの味付けにしました。以下私が行った手順。

1,牛スネ肉(150g)とキャベツ四分の一ほど(なるべく多くした方が良かったかも)を深い鍋に入れて、水をひたひたにして15~30分ほど中火で煮る。この時、肉がキャベツに覆われている方が良いかも。
2,沸騰してぐつぐついうと、アクが大量に出るので、すくってきれいに取る。水が足りなくなったら、その都度足す。沸騰してアクを取ったら、3時間半くらい弱火で蓋をして煮る。
3,肉がホロホロになったら、塩コショウで味を調整して、火を止める。適当なサイズに切り分けたトマト(私は皮を取った)を入れて、刻んだパセリをかけて、完成。

 

以上です。超超簡単。ほぼ、ポトフの手順と同じですね。私は肉の臭さが苦手なので、ポトフを作るときはセロリとブーケガルニを入れてさらに野菜を入れています。しかしこのレシピは肉の臭みを消すといったことをしていないので、味が気になりました。シンプルな味付けでどういうものが出来上がるのかあまり想像がつかなかったので余計にワクワクしたり。

で、食べてみた。

うまい。すごい。

たぶんパセリとトマトが大事なんだと思う。スープは塩でもじゅうぶん引き締まる。肉の濃さや強みが、トマトのあまじょっぱさで中和されつつ、パセリがハーブ代わりになって程よく臭みを消している。すごい。ちゃんと具材の役割が見えてくるレシピだ。薄味だが、自然なおいしさがやみつきになって、箸が止まらない。お腹がすきすぎていたので写真を撮る暇もなく、写真は割愛。

 

 ところで、森茉莉は、料理は精神をこめないとダメと言った。

 

1年の終わりが近付き、正月を迎えるにあたって、正月料理はひどく薄味に感じるかもしれない。

特に、労働をして外食や飲み会続きな人たちは尚更だろう。しかし、心機一転、気持ちのいい新年を迎えるのに、森茉莉のレシピは優しさに溢れているからオススメしたい。そして料理も。

恋人や家族と過ごさず、一人の方も(森茉莉も2度離婚を経験してほとんど一人だったそうだ)精神と身体、身体という役割を担った方の自分をいたわって、ありったけの精神を込めて自分のために料理をするのも、いいかもしれませんね。疲れた体に沁みますよ、では、よいお年を。

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