⑪<完全寛解という言葉>2017年5月24日

4月28日、最後の抗ガン剤を飲む。そして翌日、麦わら帽子とデニムを買った。これを着て外に出よう。 まだまだ倦怠感は残っているし、少し動くだけで息切れもするけれど。
 
次の日から根津神社へツツジを見に行ったり、フラワーパークやアウトレットなど、ゴールデンウィークで混雑する中、少しずつ遠出を始めた。そんな矢先。ウエスト周りがピリピリと痛みだした。そしてあっという間にお尻から膝上にかけて痛みが広がった。新しいデニムで歩き回ったせいでかぶれたのだ。今まで乾燥による軽い肌荒れはあったが、こんな痛みは初めてだった。服に肌が触れるだけで痛い。張り切って外に出始めていたのに出鼻を挫かれた気分だった。そう言えば指先や爪、顔の肌もボロボロで、じっくり鏡を見ると5年位、時間を早送りしたみたいだ。私は高まった気持ちを一旦鎮め、保湿クリームやオーガニックの下着やパジャマを身につけ、痛みが治まるまで2週間再び自宅に引き篭もり読書三昧で過ごした。オーガニックコットンは健康な時はプチ贅沢な気分を味わう位のものにしか感じてなかったが、この時はその肌触りに心底救われた。体に良いものは良い。そんな単純なことに気づいた。
 
痛みが治まった頃、PET CTの検査があった。1月以来、2度目。PETは痛くもかゆくもない検査なのだが、私にとってはとても辛いものだ。冷たいガラス板の上で30分じっとしていなくてはならない。ガリガリに痩せた体でガラス板に横たわると、背中の骨が直接当たる。5分もすると背中や腰が痛くなってくる。10分位で痛みは最高潮に達し、そのまま更に20分動いてはいけない。1月にその思いをして辛かった私は、Y先生に訴え、「体の下にバスタオルを敷く」という言葉を指示書に入れてもらっていた。が、バスタオルだけでは不安だったため、厚めの服を着てヨガマットを持参した。技師が驚いていたが、バスタオルとヨガマットの違いはないと許可が降り、無事ヨガマットを使用。今度は寝てしまうほど快適であった。
 

<主治医s 診察>

PETから2日後、結果を聞きにT大病院へ。
Y先生「血液検査はまぁまぁですね。白血球も少しずつ上がってきたかな。肝機能は、、、(コピーを渡しながら)」
私「いや、それよりPETの結果はどうでしたか?」
Y先生「あ!そうですね! 忘れてました(笑」(大声)
私「え?」
Y先生「いや、良かったから忘れてたんですよ。CRです!」
私「CR?」
Y先生「Complete remission、完全寛解です!」(大声)
私「完全! Complete! いい言葉ですね、めちゃくちゃいい言葉です! そんな言葉も使うんですね! 良かった、ほんとに良かった。ありがとうございました!!」
Y先生「(笑いながら)良かったですね。僕も嬉しいです。でもね、まだこれからですよ。油断しちゃだめですよ。食道ガンは2年が勝負ですからね。」
私「はい!ですね! でも今日はとりあえず喜びます。だって完全ですよ。Completeですよ!」
 
やや~見えます、特記すべき異常は認めません、等々の役人言葉が苦手な私は、「完全」という言葉がとても嬉しかった。よく考えてみれば、「寛解」自体が、目に見えるガン細胞はなくなった、という十分に含みを持つ言葉なので、「完全」をつけたところで訴えられるような事態にはならないという背景はあるが。
けれども私は、ようやく目指していた寛解を達成し、それに「完全」までついて、大喜び。そのままスキップでもする勢いで次のA先生の診察室に行った。
 

<A先生 口を滑らす(通常運転)>

私「A先生!やりましたよ、完・全・寛・解です!」
A先生「良かったですねぇ。頑張りましたね、カオルコさん。あんなに大きかったのに、よく消えましたよねぇ、ほんと」
私「え?」
A先生「(さすがに気づく)あ、いえ、良かったです。Yちゃんの(放射線の)当て方がうまかったんだなぁ、うんうん」
 
A先生、動揺してまさかの「Yちゃん」呼ばわり。私はクスッと笑いながら、やっぱりなと思っていた。J医院でも腫瘍の大きさを問題視していた。放射線科の先生方も実は不安だったのだろう。2年続いた遺残なしの記録を途絶えさせなくて良かったと思った。そしてY先生の技術に改めて心から感謝した。
 
T大病院放射線科は、放射線治療の誤解(2次的なもの、根治しない)を解こうと代表の医師が様々な活動を行っていると後で知った。HPにセカンドオピニオンへのポジティブなメッセージがあったのもそのためだ。私のケースはT大病院放射線科の威信にかけて、という側面もあったのかもしれない。夜中に偶然見つけたところだったが、私はT大病院に来て本当に良かったと思った。
 
帰宅すると母や友人達に完全寛解を伝え、夫とお祝いをした。
 

<熱海の温泉へ>

熱海に私達の好きな宿がある。宿泊は4度目だが、今回私は心から安らぎ、そして幸せを感じた。また来れて良かったとしみじみと思う。そして半年ぶりの外食を楽しみ、外で食事をすることへの自信をつけた。食事には人の倍の時間はかかるけれど、体の回復も少しずつだけれど、一歩一歩、明るい方へ進んでいこう。もう辛いことは終わった。私は暗闇から抜け出したのだ。

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